2021年2月14~28日にかけて宮城県の民放4局が合同で行った「LIVE MIYAGI(ライブミヤギ)」。宮城県内で地上波放送するローカル番組を、PCやスマホ、タブレット端末などでも同時にライブ視聴できるイベントで、配信プラットフォームとして『LIVEPARK(ライブパーク)』を使用いただきました。
総務省から実証事業を請け負った三菱総合研究所さんと一緒にプライム事業者として企画をまとめてきたミヤギテレビの阿部和彦さんに、今回の企画の経緯や、LIVE MIYAGIで行った実験的な試みなど、LIVE MIYAGIの手ごたえとともに、LIVEPARKを利用した感想を伺いました。
――まず、今回「LIVE MIYAGI」を実施するに至ったきっかけを教えてください。
阿部さん 総務省の「地域IX・CDN等を活用したローカルコンテンツ配信効率化等促進事業の実証実験を行う都市として宮城県と広島県が選ばれ、私たち放送局が参画することになったことがきっかけです。
「LIVE MIYAGI」は宮城県内の民放4局が放送する番組を、放送と同時にライブ視聴できるという合同配信トライアルイベント。LiveParkさんとの出会いはその企画段階で、プラットフォーム提供という立場でご参加いただいていました。
――放送局として、ライブ配信にはどのような期待を感じていたのでしょうか。
阿部さん 宮城県をはじめ、ローカル放送局の収益は右肩下がりといってよい状況です。いまは動画配信サイトもありますし、テレビ番組をアーカイブ配信するサービスも多く登場しています。各放送局もYouTubeなどで公式チャンネルを開設していますが、番組予告の放送やダイジェスト放送がほとんど。テレビ放送と同じ内容、さらにリアルタイムでの配信となると、クリアするべき課題がたくさんあります。
――放送局として、ライブ配信にはどのような期待を感じていたのでしょうか。
阿部さん 宮城県をはじめ、ローカル放送局の収益は右肩下がりといってよい状況です。いまは動画配信サイトもありますし、テレビ番組をアーカイブ配信するサービスも多く登場しています。各放送局もYouTubeなどで公式チャンネルを開設していますが、番組予告の放送やダイジェスト放送がほとんど。テレビ放送と同じ内容、さらにリアルタイムでの配信となると、クリアするべき課題がたくさんあります。
そこからローカル局が一歩踏み出すには何ができるのか模索中だったところ、今回の実証事業の話があり、企画を検討していくなか、LiveParkさんから、新しいプラットフォームで実証事業をやってみてはどうかと提案がありました。この新しいプラットフォームで実証事業が成功すれば、ローカル局が前に踏み出すことができるのではないか、ぜひチャレンジしようと決めました。
――民放4局がそろって、という点においては、各局の方向性をまとめるのに苦労されたのでは。
阿部さん プロジェクトがスタートした当初は、各局とも少しネガティブな反応でした。これまで視聴率を取り合う“ライバル”関係にあったわけですから、牽制は理解できます。
とはいえ、ローカル局として苦しい局面に立たされているのもまた同じ。キー局よりもコンテンツ量もマンパワーも少ないローカル局は、地域内での連携した取り組みが必要になると各局に伝え、理解していただきました。
県内の放送だけでは視聴者数にも限界がありますし、宮城県民に宮城県の魅力をアピールしても、消費の拡大につながりにくい。そういった点でも、全国に宮城県の魅力あるコンテンツを発信するチャンスだと考えていたんです。
――「LIVE MIYAGI」を動画配信サイトなどに負けないコンテンツにするために、どのような施策を考えていかれたのでしょうか。
阿部さん 企画段階でLiveParkさんの提案に助けられる部分もたくさんありました。LiveParkさんは日本テレビのグループ会社ということで、やはり放送のことを熟知されています。どんな仕掛けが必要か、ローカル放送に何が足りていないかなどを分析いただいていて、魅力的な提案をいくつもいただきました。
地上波データ放送を活用した大がかりな提案もあったのですが、特に今回行った楽天さんとのライブコマースの提案が魅力的でしたね。
テレビ放送でCMが流れている時間、「LIVE MIYAGI」ではライブ配信独自のCMを差し替えて配信しました。配信の視聴者に事前アンケートに答えてもらい、宮城県の名産グルメなど関心のありそうな広告動画を流すターゲティングCMです。さらに楽天市場での購入に使えるクーポンも作成し、配信視聴から購入までの動線を作りました。
このライブコマース企画には楽天さんも興味を持たれていると聞いて、LiveParkさんから楽天さんの紹介を受けて実現しました。マネジメントも含めてご担当いただけて、LiveParkさんがパートナーでよかったと思っています。宮城は東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地でもありますし、シナジーも生まれてよい取り組みになったと感じています。
――「LIVE MIYAGI」を実施してどのような手ごたえがありましたか。
阿部さん 楽天さんとのライブコマースについては、全ライブ配信の視聴数が2390件、クーポンの取得数が534件(22.3%)、購入にいたったのは33件(1.4%)で、一般的なweb広告とほぼ同等のコンバージョン率です。
また、楽天イーグルスの番組を流しているときに球団グッズのCMを流すと、他の番組のときよりも購入につながりやすいなど、放送の内容とCMとの親和性を活かせる点も見つかりました。今後も「LIVE MIYAGI」のような取り組みを続けていくとしたら、視聴データをより活用してブラッシュアップしていけそうだと感じています。
――県外からの視聴はどの程度あったのでしょうか。
阿部さん おおよそですが、宮城県外からの視聴が3分の2ほどでした。思っていたよりも多く、県外からそれだけ見てもらえているのは素直に驚きと喜びがありましたね。県内だけで経済を回すのではなく、県外へもっとPRして宮城県の名産や製品を買ってもらえたら、県内企業の活性化にもつながるのではと感じました。
もちろん宮城県も公式サイトやSNSなどで観光PRはしていますが、やはり他の都道府県に埋もれてしまう部分もあって。我々ローカル局も県外へPRができるようになれば、それだけ宮城県の観光や経済の活性化に貢献できる余地がある。そんな可能性を感じることもできました。
――「LIVE MIYAGI」を経て、今後の取り組みやイベント運営などにつなげていけそうなことはありましたか。
阿部さん まずは、県外からの視聴者が思った以上にいたことです。例えば宮城出身で県外在住の方が「地元だから」と見てくださっていたり、関心を寄せてくださったりしていた側面もあると思います。もちろん宮城出身でない方もいらしたでしょうから、ローカル放送局の番組が県外に向けて発信するという試みになりました
「県民でない人に向けて情報を発信する」という視点は、私たちローカル局にとって新しいものでした。楽天さんとのライブコマースも、さらにブラッシュアップしてターゲティングの精度を上げていけば、よりコンバージョン率の高いCMができるでしょう。
一方で課題として感じたのは収益面と、実際に自分たちだけで「LIVE MIYAGI」と同じようなライブイベントを行うときに、各局が再びうまく連携できるかどうかという部分でしょうか。
今回は総務省の実証実験ということもあり、マネタイズをあまり意識しなくてもチャレンジできた面があります。今後、実際に自分たちでビジネス的な取り組みとして行おうと思ったときにはさらにシビアな企画運営が必要になるでしょうし、各局の足並みをそろえねばなりません。
宮城県だけではなく東北エリア全体で考えても、ローカル局は危機的な状況に置かれています。従来の運営方法では衰退してしまうのですから、新しい事業へと投資するチャレンジもしていかなければならないんです。そうした点で、LiveParkさんはプラットフォームだけでなく未来に向けた具体的な提案をいただけて非常に助かりました。
――放送局の生き残りをかけた取り組みにもなっているのですね。最後に、今後の展望をお聞かせください。
阿部さん ローカル局というのは先にお話ししたとおり、キー局と比べてコンテンツ量やマンパワーの面で及ばない部分が多々あります。でも、例えば地域の球団のニュースを大きく取り上げたり、県内の市長選のニュースでキー局よりも長い時間を使えたりと、地域に根差した放送ができますし、その義務もあります。
それに、地域に密着してずっとやってきたからこその信頼感もあると思うんです。
例えば、宮城県は東日本大震災で大きな被害を受けました。テレビでも連日被害状況が流れていましたが、全国では日々違う事件や出来事が起こりますから、全国ネットのニュース番組などでは震災関連のニュースを取り上げる頻度を減らさざるをえません。ですが我々ローカル局は宮城県の被害状況などを追い続けていました。家族の安否や詳しい被害状況を知りたいと思う視聴者がいるからです。
県外に住んでいる地方出身者は、そうした県内の状況をSNSやニュースでしか知ることができません。例えばニュースアプリだと、自分の出身地を入力するだけでその地域のニュースを知ることができます。同じように、出身地で放送されている番組をリアルタイムで見ることができれば便利だし、特に災害時などは安心にもつながりますよね。ですから私は、あくまでテレビとWebの同時配信にこだわって取り組みをしていきたいんです。
そういった意味でも、「LIVE MIYAGI」を今回一度きりではなく、継続的な取り組みとしてまた実施したい。今もLiveParkさんとは定期的にディスカッションをして、継続して力を貸していただいていますし、次は実証事業ではない本当の「LIVE MIYAGI」ができたらと思っています。